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空き家を貸すのは簡単ではない理由

おうちについて

2021/06/06

 

 

こんにちは、終活と自分整理を応援する「自分図鑑」の吉田です。

 

 

私は長年、賃貸住宅や空き家に関わる仕事をしていました。

空き家に関わる仕事をしていると、「空き家探してるんだけど、良い賃貸空き家はないですか?」という声がよくかかります。

 

おそらく多くの人に、「空き家に携わっているのであれば、賃貸空き家の情報をたくさん持っている」と思われているようです。

 

でも、実際には「賃貸空き家」の情報はほとんど持っていません。

なぜなら、空き家を貸したいという人にあまり出会わなかったからです。(売りたいという所有者さんとはたくさん出会いました)

 

 

では、なぜ「賃貸空き家」はあまり出てこないのでしょうか?

その理由は、所有者の立場から考えると見えてきます。

 

 

 

今回は、「空き家を貸すのは簡単ではない!」というお話をしていきます。

 

 

 

●空き家を貸すのは簡単ではない!●

 

 

 

1. 「貸家」と「空き家の賃貸」の感覚的な違いとは

 

感覚的な部分ではありますが、「貸家」と「空き家の賃貸」は別物だと私は感じています。

 

 

まずは貸家のお話しから。

不動産屋で流通している賃貸の戸建ては、一般的に「貸家」と呼ばれます。

 

『貸家』の一番の特徴は

すぐに住める状態である

ということです。

 

もちろん、ボロボロの貸家もありますが、ほとんどの貸家が最低限の条件(電気が通っている、お湯が出る、雨漏りしない、鍵が閉まる、キッチン・風呂・トイレが使える等)をクリアしているので、すぐに生活を始めることは可能な物件がです。

 

 

 

 

一方、「空き家賃貸」住めるレベルではないものも含まれます。

 

私が今まで見た空き家で、「これは住めるレベルじゃないな」と思った空き家はこんな空き家です。

 

・大量の荷物が残っている

・トイレがボットン便所(しかもかなりの旧式)

・流しの水が下水道に繋がっておらず、川へ垂れ流される

・雨漏りがする

・建物が傾いている

・水回りが古くて使えない。

・お風呂の給湯器が超旧タイプ

・給湯器が古くて使えない

・鍵が閉まらない

・トイレが和式

・獣が住み着いている

 

 

こういう「すぐに住めるレベルではない物件」は不動産屋からはほとんど流通しません。

 

しかし、空き家バンクからは、こういった空き家も出てきます。

 

こういった住めるレベルではない空き家は、「家賃を安くするから自分で改修して住んでちょうだい」というスタンスで貸し出されます。

 

 

ちなみにこの「貸家」と「空き家の賃貸」の違いは、あくまで私の感覚上のお話しですので、法律上の定義ではありません!

 

 

 

2. 田舎暮らし希望の人は、この感覚を持っている人が多い

 

空き家の賃貸物件を紹介するときは、必ず「荷物が残っている」「リフォームが出来ていない」「水回りは交換が必要」「床を張り替えないと危ない」などの状況を説明します。

しかし、田舎暮らしを希望される人や、その街に惚れ込んで物件を探している人は、この悪条件を聞いてもそれほど驚きません。

冷静に「どれくらいの補修が必要か」などの質問を返してこられます。

そして、物件の良し悪し、家賃、初期投資費用をトータルで考えて、借りるか借りないかを判断されます。

 

田舎暮らしを希望している人は「空き家を借りるには、ある程度の初期投資が必要」という感覚を持っている人が多いようです。

 

おそらく、空き家バンクのサイトで物件を探したり、実際に内覧に行っているうちに、「荷物が全撤去されている家の方が珍しい!」という感覚に変わっていったのだと思います。

 

 

 

 

3. 貸家を探している人は「空き家の現状」を知らない人が多い

 

一方、普通に戸建て賃貸を探している人は、「荷物が残っていないのが普通」「お湯が出るのが普通」と思っている方が多いようです。

こういう人に「すぐに住める状態ではない空き家」を紹介すると、ほとんどの人がドン引きします。

 

 

賃貸物件として賃貸空き家を探しに来られる人には

 

①普通に貸家を探しに来た(不動産屋のサイトを見ても良い物件が出ていないから)

 

②空き家賃貸は敷金も礼金ゼロで、家賃も格安だと思って探しに来た

の2パターンがあるように感じます。

 

 

①の人は、そこそこ綺麗な物件を想像しているので、「すぐに住める状態ではない空き家」は理想とはかけ離れているようです。

 

②の人は、お金を安くしたいから空き家を探しに来ているので、「荷物撤去代等の初期費用に何十万円かかる物件」はそもそも借りようという気にならないようです。

 

 

 

 

 

 

4. 「すぐに住める状態」にするにはお金がかかる

 

では、空き家の所有者はなぜ、「すぐに住める状態」にしてから貸し出さないのでしょうか?

それは、「お金がかかるから」です。

 

 

ここからは、「すぐに住めるレベルの貸家」にするために、どれくらいの費用がかかるかを見ていきたいと思います。

 

 

 

❶荷物撤去費

まず、「すぐに住める貸家」として貸し出すには、ほぼ全ての荷物を撤去しなければなりません。

 

例えば築40年、土地40坪、住宅街の一戸建ての荷物を業者に頼んで処分すると、30~80万円くらいの処分費がかかります。

もちろん、荷物が多い家や、車が横付け出来ない家などはもっと高くなる可能性があります。

 

 

また、築80年、土地300坪、母屋と離れと蔵があるような田舎の家は、荷物量も多いため、

100~250万円くらいの処分費がかかることもよくある話です。

 

 

 

 

❷給湯器

数年空き家だった場合は、高い確率で給湯器が壊れています。(寒い地域は特に)

すぐに住める状態で貸し出す場合「お湯が出る」は必須条件です。

交換費用として10万円~30万円くらいを見ておかないといけません。

 

 

 

 

❸水回りリフォーム

水回りは、壊れていなければ交換無しで貸し出しても、特に問題はありません。

しかし、「物件を気に入ってもらう」という観点から考えると、水回りの綺麗さがとても重要に要素になります。

私も長年賃貸業界にいましたが、水回りが古いか新しいかで、お客様の反応が全然違ってきます。

 

もし、水回りを交換するとなると、

キッチン 20万円~70万円

お風呂  50~100万円

洗面   5~20万円

トイレ  20~50万円

くらいの費用がかかってきます。

 

さらに、古い家の場合、「トイレを和式から洋式に変更」「トイレのタイルを全て剥がしてリフォーム」など、水回りだけの交換では済まないケースも出てきます。

 

 

 

 

❹雨漏り修理

雨漏りの修理もかなりのお金がかかる作業です。

部分的な補修で直れば良いですが、瓦が劣化している場合は、何十万~何百万といった費用がかかります。

 

 

 

 

 

❺ハウスクリーニング

洗い作業と言われるもので、業者に依頼して行う、室内のクリーニングや掃除のことです。

マンションやアパートの場合、入居者入れ替えの際は、ほぼ全ての物件でハウスクリーニングを行います。

 

「すぐに住める状態」で貸し出す場合は、基本的にはハウスクリーニングは依頼した方が良いでしょう。

家の広さにもよりますが、土地30坪、2階建ての家の場合は、7~20万円くらいの費用が発生します。

 

 

 

 

 

❻リフォーム

壁・床・畳等のリフォームです。

リフォームに関してはその家の状態によりますので、必要かどうかは一概には言えません。でも、私の個人的な意見としては「畳の表替え」くらいはしてほしいです。

使い古された畳はダニが住み着いていそうな気がするからです。

 

表替えの費用はピンキリですが、1枚1万円くらいが相場だと思います。(マンションの畳はもう少し安い)

6帖の部屋が2つあれば、12万円かかるという計算になります。

 

 

 

 

さて、いろいろと費用の話はしましたが、空き家を「すぐに住める状態」にして貸し出すには、結構な初期投資が必要になります。

当然ながら、所有者が一括で支払う金額です。(リフォームローンを組むことも可能ですが)

 

問題は、ここまでお金を投資して「空き家を貸す」という気になるかどうかです。

 

家を売却できない理由(遺産分割が終わっていない等)がある所有者は、「空き家で放置するくらいなら賃貸で出そう」と思うかもしれません。

 

 

しかし、空き家を貸すとなると、入居者が入っている間は貸主としての責任がかかりますし、多額の初期投資もかかります。

 

売却の場合は、売れたらそれで終わりです。

方に住んでいる所有者からすると、「貸すのはいろいろと面倒だから、売ってしまいたい」という気持ちになるのも理解できます。

 

空き家賃貸が少ない理由は、こういったことも原因の一つになっています。

 

 

 

 

 

 

5. 組織としてシステムを構築すれば、貸す人も増える

例えば、岐阜県郡上八幡市の取り組みを例に挙げます。

郡上八幡市では「一般財団法人 郡上八幡産業振興公社チームまちや」が町を挙げて空き家の再生に力を入れています。

移住者を増やし、街を活性化させるための取り組みです。

 

チームまちやが空き家所有者から10年契約で空き家を2万円程度で借り上げます。

それをチームまちやの費用で、住める状態にリフォームします。

リフォーム代は3~500万円ほどかかるようです。

回収できた家は、5~7万円程度で賃貸募集します。

入居者対応はチームまちやがするので、所有者は家賃を貰うだけです。

そして、10年経ったら物件は所有者に返還されます。

一度大規模リフォームされており、物件の価値が上がった状態で返ってくるので、所有者にとってもメリットが高い。

 

郡上八幡市ではこういったシステムで空き家再生を行っています。

 

このように、組織としてシステムを構築すれば、「すぐ住める状態の賃貸空き家」を増やすことができるかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

6.普段から荷物を減らしていきましょう!

いざ空き家になったとき、大量の荷物が残っていると、多額の処分費がかかってしまいます。

 

子供たちが困らないように、普段から荷物を減らすように心がけましょう!

 

 

 

 

 

 

 

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