自分図鑑合同会社 > 読み物 > 古民家は実は地震に強い?!

古民家は実は地震に強い?!

おうちについて

2021/05/20

古民家とは?

みなさん、「古民家」と聞くと、どういう建物を想像しますか?

 

私は空き家事業に携わっていたので、『古民家』という言葉を頻繁に耳にしていました。

 

古民家というと、ただ単に「古い一戸建て」と思っている方もおられます。

しかし、明確ではないものの、古民家には定義があるっていうことを知っていましたか?

 

一般的な古民家の定義は

 

○築50年以上の木造建築

○伝統的な建築工法である『木造軸組工法』で建てられている(いわゆる伝統工法)

 

と言われています。

 

 

 

伝統工法ってどんなもの?

今、建てられている木造住宅の工法の代表的なものには「在来工法(軸組工法)」「ツーバイフォー工法」「木造ラーメン工法」などがあります。

 

いずれも、しっかりとした基礎を作り、その基礎に柱や壁を作って強度を持たせるものです。

 

 

一方、伝統工法とは、文字通り古来から伝わる建築工法のことです。

基本的には金具は使いません。

 

在来工法のようにベタ基礎も使わず、石の上に柱を乗せて建てていく、まさに伝統的な建て方です。

また、立派な大黒柱、太い梁、土間張りの台所、土壁なども、伝統工法の特徴のひとつです。

 

 

 

昭和25年に在来工法が制定されるまでは、日本の木造住宅のほとんどが『伝統工法で建てられていました。

おそらく、1000年以上は同じ工法で建築されていたようです。

 

外から見ると古そうに見える立派な家でも、『在来工法』で建てられている家もたくさんあります。

定義は一つではありませんが、『古民家』と呼ばれるものは、「見た目と古さ」だけではなく、「工法」が関係するのです。

 

 

 

伝統工法の柱は、石の上に乗っているだけ

古民家の床下を見ると、ほとんどの方がビックリします。

その理由は、「柱が固定されていないから」です。

川で拾ってきたような大き目の石に、ちょこんと乗っているだけなんです。

 

今の家の建て方を見てきた人間からすると、

「なんでこんな建て方で倒れないんだろう??」と疑問に思います。

 

それに、昔の家は襖だらけで柱も壁もすごく少ない。

さらには非常に重たい瓦がこれでもかというくらい乗っかっています。

 

 

こんな造りなら、地震が来たら一瞬で倒壊しそうに感じます。

でも、地震大国の日本で1000年以上作り続けられていた工法です。

地震のたびに全戸倒壊してたら、命がいくつあっても足りません。

つまり、伝統工法の家は、地震が来ても全壊しないということになります。

 

 

 

阪神大震災でも実証されていた!

1995年に兵庫・大阪を襲った「阪神大震災」

この地震で、全壊が約10万戸、半壊が約14万戸と、非常に多くの建物が倒壊しました。

 

私もこの地震のときは大阪に住んでいて、神戸方面の友達がたくさんいてたので、当時のことは今でも鮮明に覚えています。

 

 

震災に行われた調査結果によると、全壊した家のほとんどが、新耐震基準(1982年)制定前に建築された「在来工法」の家だったそうです。

「伝統工法」の家は無傷ではなかったものの、全壊した家は少なく、多くが半壊、もしくは瓦が落ちた程度で済んだそうです。

このことにより、「伝統工法の家は地震に強い」ということが証明されました。

 

 

 

 

なぜ、伝統工法の家は壊れなかったの?

伝統工法が地震に強い理由は「免振構造」だからです。

「免振構造」とは、地震の際に建物も一緒に揺れて、地震のエネルギーを吸収してしまう構造のことです。

 

と言っても、いまいちピンと来ないと思いますので、もう少し分かりやすく。

 

現在の建物は、「揺れに耐える」構造になっています。

鉄骨で出来たカチカチの箱をイメージしてください。

しっかりとした構造物だと、必死に揺らしてもそう簡単には壊れません。

 

それが、割りばしで作った箱だと、強い力がかかるとポキッと折れてしまいます。

 

つまり、揺れに耐えようとすると、かなり高い強度にしなければ、折れたり崩れたりしてしまうのです。

 

 

一方、伝統工法の建物は、カチッと固定されていません。

このカチッと固定されていないことで、上手く揺れのエネルギーを逃がすことができるのです。

 

たとえば柱の接合部分。釘を使っていないので、揺れが来ても継ぎ目同士が微妙に動き、力を逃がすことができるようになっています。

 

柱もおなじです。

地面と繋がっていないので、地震エネルギーに対し、無理な抵抗がかかりません。

結果、飛び上がったり横にずれたりはするものの、柱が折れたり崩れたりしないのです。

 

 

 

無駄な抵抗をしないから、地震に強い

建築の技術は昔に比べ格段に上がっています。

強度の高い接合金具が開発されているので、地震に対する安全度も格段に上がっています。

現在の技術であれば、阪神大震災級の強い揺れにでも耐えられる家を作ることができます。

 

しかし、昔の家は違います。

大工さんの技術は非常に高いものの、材料の技術は高くはありませんでした。

材料が強くないので、地震に耐えようとカチカチの家を建てたところで、地震エネルギーには勝てません。

 

そのため、昔の人は、

強大なエネルギーにはどうせ勝てないんだから無駄に抵抗はしない。

地震の揺れに一緒になって揺れることで全壊しない家を作る。

ことを選択したのだと思います。

 

 

 

全壊はしないけど、いろいろ壊れます

伝統工法の家は、地震が来てもなかなか全壊はしません。

しかし、全壊しないだけで、

・瓦は落ちる

・土壁は割れる

・漆喰も割れて崩れ落ちる

・建物が傾く

・ガラスが割れる

など、いろいろと壊れます。

 

 

 

人が亡くならなければOK!

伝統工法の家は、大きな地震が来たらいろいろと壊れるけど、居住空間は押しつぶされずに残ります。

阪神大震災のときのように、「天井に押しつぶされて亡くなる」という可能性も低いそうです。

 

これは私の憶測ですが、昔の人は

「人さえ亡くならなければ、家は時間をかけて直せばいいじゃない」

と考えていたのじゃないでしょうか。

だから、自然の摂理に反抗するのではなく、最低限の安全を確保できる家を作ったのだと思います。

 

 

 

 

地震の備えはしっかりと!

「古民家は地震に強い」という記事を書きましたが、それは昭和中期の家に比べての話です。

今の工法で建てられた家の方が、強度は断然強いです。

特に、積水ハウス等のハウスメーカーが設計した家は、驚くほど地震に強いです。

 

それに、古民家の場合は「シロアリ」の被害等で、柱が弱っている可能性もあります。

 

耐震補強はお金がかかるのでなかなかできないとは思いますが、古民家に住んでいる人は「柱補強」等をして、しっかりと地震に備えてください。

投稿日: 2021/05/20