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「遺言書は手続きのために必要だ」と感じるシチュエーション3選(家売却編)

おうちについて

2021/04/16

こんにちは、終活と自己整理の応援する会社「自分図鑑合同会社」の吉田と申します。

みなさん、「遺言書」と聞いて、どんなことをイメージしますか?

 

遺言書は「お金持ちさんが遺産の分け方で揉めないように書くもの」と思っている方も多いのでは?

 

もちろん、それも正解なんですが、遺言書の役割はそれだけじゃないんです。

 

私は長く、不動産と空き家に関わってきました。

そのなかで、「法律上の手続きが複雑すぎて売りたくても売れない!」というケースをたびたび見てきました。

 

 

 

今回は、「不動産を処分(売却)する」という観点で、遺言書を作成しておいた方が良いケースを3つ厳選してご紹介します。

 

 

認知症

私はこんな相談を受けたことがあります。

 

 

相談者「先日、父が亡くなりました。

    実家を売却したいのですが、「施設に入所中の母が認知症なので、

    成年後見人を付けない限り、家の売却はできない」と言われました。

    成年後見人ってすごく大変だと聞くので、成年後見人を付けずに

    家を売る方法はありませんか?

 

私  「残念ながら、他に方法はありません。」

 

相談者「分かりました。兄と相談した結果、母が亡くなるまで空き家に

    することにしました。ありがとうございました。」

 

私  「・・・・・・

    あ、ありがとうございました・・・」

 

 

認知症の人は、法律で「契約等の行為をした場合、取り消すことができる」と決まってるんです。

つまり、家の売買契約を結んでも、5年後に「やっぱ売買契約取り消しまーす」と言われたら、契約はなかったことになってしまうんです。

そんな危険な契約はできないので、実質的に

認知症=契約業務が一切できない

となってしまいます。

 

では、どうしたら家を売却できるかというと、

「成年後見人制度」というお堅い制度を利用するしかありません。
(成年後見人の説明は今回は割愛します)

一度成年後見人を付けると、よほどの事由がない限り、亡くなるまで外すことはできません。

 

「家の売却さえできればいいのに」

「売買価格が300万円くらいにしかならないのに、手間もお金もかけたくない」

 

という人は、後見人を付けることをためらって、そのまま空き家にしてしまうこともあるようです。

 

 

 

事前対策方法は?

 

では、こんな大変なことになる前にどうしたらよいのでしょうか?

 

いくつか方法はありますが、一番単純な方法は

 

「遺言書を作成しておく」ことです。

 

 

上の例の場合、母が認知症になった時点で、父は遺言書を書いておけば良かったのです。

「土地建物は長女◯◯に、その他の財産は長男◯◯に相続する」という内容の遺言書を作成しておけば、父が亡くなった後は長女の判断だけで家を売ることが出来たんです。

 

遺言書さえあれば、何の問題もなく家が売却できたのです。

 

 

 

 

 

前妻(夫)との間に生まれた子ども

 

 

「わたし、離婚歴があるんです。でも、再婚して今はとても幸せです」

こんな幸せな家庭を築いた太郎さんですが、太郎さんは知らなかったんです。

自分が亡くなった後、花子さん、バラ子さん、ユリ子さんが大変な思いをすることを・・・

 

太郎さんが77歳でこの世を去りました。

悲しみに暮れた後、バラ子さんは母:花子さんを家に呼んで同居し、誰も住まなくなった実家を売却することにしました。

 

手続きを進めていくと、「太郎さんの前妻との子「トラ子」さんに印鑑をもらわないと、家の売却は出来ませんよ」と言われてしまいました。

 

 

そうなんです。『家』も当然相続財産なので、相続人全員で分け方を決めないと、処分できないんです。

なので、トラ子さんの承諾が必要です。

 

でも、太郎さんでさえ、トラ子さんが1歳の時に離婚したあと55年間、どこで何をしているのか知らない状態だったので、連絡先が分かるわけもありません。

 

 

 

どうしたら良いのか?

 

では、どうやってトラ子さんの居場所を突き止めるのか?

それは、戸籍をたどって調べるしかありません。

しかし、居場所が分かっても、すんなり印鑑を押してくれないかもしれません。
(太郎さんの浮気や暴力が原因での離婚だった場合、恨まれてるかもしれません・・・)

 

この手続きも、バラ子さんやゆり子さんがパパっと行動できるタイプなら良いのですが、「父:太郎は恨まれているかもしれない・・・」等のネガティブな想像ばかりしてしまうタイプだったら、連絡をすることが嫌で嫌で仕方なくなってしまいます。

 

 

 

事前に出来た対策とは

 

 

この場合の対策方法は、「不動産をバラ子に相続する」等の内容の遺言書を残すことです。

 

子どもには「遺留分」と言われる、「自分の貰えるはずだった相続財産の半分を請求できる権利」があります。

 

なので、トラ子さんから後で遺留分を請求される可能性はあります。

 

ただ、「不動産を売却する」という観点で言うと、遺言書により不動産を相続したバラ子さんの一存で売却することが出来るようになります。

 

不動産は「管理義務」が残るので、使わなくなったらすぐに売れるように、事前準備をしておきましょう。

 

 

 

子どもがいない夫婦

この場合、夫が亡くなったら、日本の法律では夫の兄弟であるマツ子さん、タケ子さん、梅男さんにも相続権が発生してしまいます。

でも、ほとんどの人は妻である花子さんに全額相続させたいのではないでしょうか?

 

花子 「お義兄さん、お義姉さん。夫は生前、財産は全ておまえに相続させるって言ってたんです。だから、私が全額引き継・・・」

マツ子「ちょっと待って!!遺言書は書いてなかったんでしょ?そんな口約束、意味ないわよね」

タケ子「法定相続っていう法律で決まってるんでしょ?当然私の取り分はもらうわよ」

花子 「いや、ただ、現金を残してくれてないので、財産を分けるにはこの家を売らないと分けられないんですよ・・・」

マツ子「じゃあ売ったらいいじゃない」

タケ子「消費者金融で借りたらいいんじゃない?」

梅男 「いや~わしは花子さんが全財産もらえばいいと思うんだが・・・」

マツ子「梅男は黙っといて」

タケ子「じゃあその分を梅男が私たちに払いなさいよ」

梅男 「・・・・・・」

花子 「わ、分かりました・・・。お金は何とかしてお支払いします・・・」

マツ子「お支払いするって偉そうな!私たちは法律に乗っ取って話しているだけです!」

タケ子「文句があるなら国に言いなさいよ!法律で決まってるんだから!」

花子 「・・・・・・」

 

実際にはこんなにキツイ人達はあまりいないと思いますが・・・

こんな泥沼になる可能性も十分に考えられます!

 

現在は配偶者居住権があるため、花子さんは家に住む権利を義姉に対抗できますが、

気の弱い花子さんがこの義姉たちに一人で立ち向かうのはかなり厳しそうですね。

 

 

事前にできた対策とは

 

この場合の対策は、100%遺言書が有効です。

 

遺言書に「全財産を妻花子に相続させる」という内容を書いておくだけ!

 

兄弟には遺留分は発生しない為、あとで金銭を請求される心配もありません。

(人間関係は多少もつれる可能性はありますが・・・)

 

 

 

 

まとめ

今のご時世、二束三文の家がものすごく増加しています。

私のように田舎にお住まいの方は、特に家が売れにくい。

タダでも貰い手が見つからない家もたくさんあります。(修理費・解体費・荷物処分代に何百万円もかかるため)

 

高額の不動産であれば、金銭での揉めごとが起こらないように、遺言書を用意した方が良いかもしれません。

しかし、「築年数が古い」など、負の財産になる可能性がある家の場合は、早いこと売ってしまうことが得策です。

そのためにも、手続きでつまづかないように事前準備をしておくことが大切です。

ケースによっては「遺言書」がとても有効に働くというを覚えておきましょう!

 

 

以上、「遺言書は手続きのために必要なんだ」と感じるシチュエーション3選(不動産売却編)でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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