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着物の処分は心が痛い

おうちについて

2021/04/10

私は以前、空き家の相談窓口業務をやっていました。

相談の中には「荷物を処分業者を紹介してもらえませんか?」というご依頼がよくありました。

 

 

私は、荷物の相談を受けた場合、

 

①まず、私が家の中の荷物量を確認しに行く

 

②業者に見積もりを依頼する

 

③依頼者様に「骨董品屋さんに買い取れるものがあるか見てもらいますか?」と質問する。

 

④骨董品屋の鑑定を希望する場合は、骨董品屋に来てもらい、その場で鑑定。

 

⑤骨董品の買取金額に納得頂けた場合は、その場で現金買い取り

 

⑥荷物処分業者による荷物撤去

 

こんな流れで行っていました。

 

 

荷物撤去の依頼が来た場合は、まず私が見に行くのですが、現地で依頼者様からよく出る質問は

 

『着物』のことです

 

「親の残した着物がたくさんあるんだけど、誰も着ないんです。

着物は売れないと聞くし、誰かに貰ってもらうことはできませんか?

ただ捨てるのは心苦しいので・・・」

 

こんなお話しになることもしばしばです。

 

私の実感では、着物というのは他の衣類に比べ思い入れが深いことが多く、普通の服のようにポイっと処分することに抵抗を持っている人が多いように感じます。

 

思い入れの深い人は、その着物がごみとして業者に捨てられていく様を見ると、心を痛めてしまいます。

 

空き家の片付けの場合、着物を着ていた本人はすでに亡くなっている場合が多いです。
でも、お子さんも着物を捨てることに抵抗を持たれる方が多くおられます。

 

そんなときのためにも、私はいつも骨董品屋さんを呼んでいました。

 

骨董品屋さんからしても、新しい着物(昭和40年代以降のもの)はほとんど売れないので、あまり買い取りたくないらしいのですが、それでも、

「全部で3000円でしか買い取れないけど、それでも良かったら買い取りますよ。」

と言うと、ほとんどの方から

「買い取ってください!誰かに使ってもらえるならそれだけでいいんです!」

「捨てずに済んでホッとしました」

という反応が返ってきます。

 

そりゃ本音で言うと、高額で買った着物が20着で3000円にしかならなかったら悲しいと思います。

でも、値段の問題ではくて、

「ゴミ」になるのか

「誰かに喜んで使ってもらえるのか」

という『気持ちの差』の部分が大きいようです。

 

 

 

先日、私は約30ヶ所で、少人数制のミニ勉強会を開催しました。

対象年齢は50代~80代くらい
サークル活動をしている人たちの集まりでの開催だったので、8割くらいが女性でした。

 

勉強会の最中に、「家に着物眠ってますか~?」と質問したら、たくさんの方から「あるある!いっぱいある!」という声が返ってきました。

 

少人数の会場なので、みなさん、着物への思いをいろいろと話してくださいます。

 

「嫁入りのときに持ってきた着物が眠ってるのよ~。戦後すぐくらいの着物。捨てるに捨てられないけど、このまま残しといても子どもも困るわよね~」

なんて声が、あちらこちらで上がりました。

 

 

着物といって衣類の一種ですが、やはり着物は少し特別な思いがこもっているようです。

 

 

モノは使わなくなったら「ゴミ」になってしまいますが、本人からしたら

「使わないけどゴミ扱いしてほしくない!」という気持ちになってしまいます。

 

私も今、着物の利活用の一環として

『着物つなぐプロジェクト』という取り組みを始めました。

これは、「身体の自由が利かない人のために、着物をオーダーメイド服にリメイクするプロジェクト」を行っている方とコラボレーションした企画です。

皆さんからお安く引き取らせていただいた着物を、オーダーメイド服の生地として使います。

そして、着物を手放す方の『思い』をお聞きして、その思いも一緒に引き継ぐという取り組みです。

まだ始めたばかりなのでどう育っていくかまだ分かりませんが、

せっかくの思いの詰まった着物を

ただ処分するのではなく

誰かのために使ってもらえたら嬉しいなぁと思います。

 

新しいものと古いものがもう少しだけ上手く共存できる世の中になればいいなぁと感じる今日この頃です。